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Channel: 思いのしずく
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2014 午年

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新年おめでとうございます
大阪へ向かう新幹線のぞみよりご挨拶申し上げます

1990年の元旦。
読売新聞の別刷特集の一面、開高健の「ゴルバン・ゴル計画」 、チンギス・ハーンの陵墓を探索する夢のビッグ・プロジェクトの記事に胸踊らせた。

開高さんの名言 「悠々として急げ」 の世界をそのまま見せてくれるモンゴルの大草原と、大地を風のように駆ける馬たちのイメージは、午年に相応しかった。
あれから24年、いまだにハーンの墓は大草原のどこかで静かに眠っている。
元旦の紙面を飾った文章は、年末の12月9日に亡くなった開高健の遺稿だった。

記事を読んでから16年後、2006年の夏にモンゴルへ旅立った。
草原という想像していた以上に何もない悠久の世界に自分を置き、クルマより馬が便利という貴重な経験を味わった。
人間とクルマとの付き合いはたかだか100年余、馬との付き合いは数1000年、その違いを身をもって感じた。
化石燃料には限りがあるが、草さえ有れば世界中何処へでも行くことが出来る馬の凄さは、モンゴル世界帝国が証明している。
たかが草の偉大な力である。

翌2007年、サラリーマンの暮らしに別れを告げて独立。
馬車馬とは遮眼帯を付けられた馬が脇目も振らず走ることだが、遮眼帯が取れたのだと思う。
沢木耕太郎に、マラソンランナーは景色が見えた時に引退するという文章がある。

草原を自由に駆けめぐっている馬と、それに寄り添う人々の姿が美しいと思った。
その時まで人生は一本の道だと思っていた。
しかし草原に道はない、目標に向かって歩いた軌跡が道となる。
草原で地図なき道を歩もうと思った時、世界が広がった。

「悠々として急げ」 という惹句を残して旅立った作家の享年は58歳。
目標はなるべく遠くに定め、全力で立ち向かえと言っているように聞こえる。
短時間の内に作家が残した豊穣な文学世界を俯瞰する時、ダンディーな汗血馬が全力疾走で駆け抜けた一生を思う。

今夏の誕生日で開高さんの享年に並んでしまう。
同じ地点に立って、改めて巨匠の偉大さを感じる。


※写真は仙台市の歯科一番町の桃野さんから届いた元旦のしつらい。岡本光平と北野たけしがコラボした 「歩」 屏風と松竹梅。

本年もよろしくお願いいたします。

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