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Channel: 思いのしずく
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シベリア・バイカル紀行 3

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サガン・ザバの大キャンバス
 
 
 
第3次 岡本光平シベリア・バイカル湖〈岩画〉プロジェクトは、岩画の調査、さらには拓本を採録するのが目的の旅。

そのクライマックスはバイカル湖の波が、白亜の巨大岩壁に直接打ち寄せる「サガン・ザバ」にあった。

日本でいえば国立公園のように厳重に管理され、人を寄せ付けないほど人里離れた場所にそれはあった。

手付かずの自然が残されている原野を走り、人影が全くない山の頂上に向かってひたすら登って行く。

最初、目的地の状況がわからないため、山の頂上に岩画ポイントがあるのかと思った。

胃をえぐるような悪路と闘いつつ進む4駆バスが止まっただけで、一仕事終えたように思うほど、ロシアの道路事情は悪い。

しかし、考えてみたら、人間に優しいより、自然に優しい方が正しいのかも知れない。

日本のように隅々まで快適に舗装された道というのは、もはや取り返しのつかない環境破壊なのだろう。

道が悪路だから舗装しようではなく、道はそのままに、クルマの方を4輪駆動にするロシアの発想……地球に優しい彼等に拍手。

と思っているうちにバスが止まった。

目的地に着いたと思ったのは早とちり。

そこから20分ほどかかる下り急勾配を、たくさんの資材を担いで降りたのだが、途中で可憐な花を愛でたり毒ヘビを避けたりしながら、ようやくのことで平地に着いた。

拓本調査の前に腹ごしらえ、あっという間に草上のテーブルに料理が並ぶ。

この野外ランチが今回の旅の第2の楽しみ。

サフルーテのランチではバイカル湖で捕れた魚のスープが、オリホン島のランチでもその魚の蒸し焼きがあっという間に調理され、美味しかった。

この日も鍋が火にかけられたので、何が入れられるのかと期待していたら、ドライバーがブッシュの中に分け入った。

今回のバイカル湖の魚は、玉ねぎとのマリネで、さっぱりしておいしく頂いた。

戻ってきたドライバーの手には草の葉と花が一束あり、ナイフで刻むと沸騰した鍋に放り込んだ。

数千年前に岩画を彫った古代人も、このようにして作業の合間にハーブティーを飲んだのかと思うと、美味しいだけでなく味わい深いものがあった。
 
 
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                   ロシア人スタッフと大学教授のセルゲー氏(右端)
 
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今まで見てきた他の岩画ポイントでは、鹿やトナカイのモチーフが圧倒的に多かった。

ちなみにイルクーツクに近い旧石器時代のマリタ遺跡の発掘からは、マンモス9体、毛サイ11体、馬2体、トナカイ407体、野牛1体、洞穴ライオン1体、オオカミ1体、北極キツネ50体、クズリ2体ほか多数の鳥類の骨が確認されている。(NHK出版「日本人はるかな旅」より)

岩画に鹿やトナカイの像が圧倒的に多いのは、狩猟民族にとって生きて行くために一番大事な食べ物だったからだ。

我々も腹を満たしてバイカル湖の波打ち寄せる畔に向かうと、大自然のパノラマと巨大な岩壁が待っていた。

身体中の毛が逆立つような霊気を感じた。

まさしく 「聖地」 以外の何物でもない。


しかも、その岩壁に美しい鹿やトナカイのモチーフを想像していた頭には、ショックなデザインが彫られていた。

サガン・ザバ岩壁には、驚くことに宇宙人を思わせるシャーマンの姿が何体も彫られていたのだ。

数千年前の人々はシャーマンの姿を通じて、現代の我々に何を伝えようとしているのか。

(岡本光平展で発表される、シャーマン像の拓本にご期待ください。)
 
 
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                             岡本光平 篆刻 

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