前日聞いたところによると、「米寿を迎えた自分への記念として、買わせて頂きました。」とおっしゃっていましたが、88歳とは信じられない、10歳は若く見えるお元気そうな方でした。
2度足を運ばれたのは、人形が大き過ぎて持てない重さではないかと心配されたから。
でも、何とか持ち上げることが出来て安心し、喜んで帰られました。
そんな様子をフェイスブックに書いたところ、美術品販売をしている先輩から、
「それはなにより!自分へのプレゼントに人形をえらばれるひとが多いですね。」
とコメントを頂きました。
これは大変嬉しい出逢いでしたが、今回会場に立っていてよく耳にした言葉があります。
「良いものと出合っても、断捨離しなければならない年だから寂しい」
そうおっしゃる方々はまだ60代後半くらいの年齢の人が多かったです。
まだまだ皆若いのになぁ、と思う一方で、津波にすべて流され、仮設住宅暮らしでは飾りたくても飾れないという言葉には胸が塞がれました。
そんなことを考えていると、81歳という声の大きい元気なご婦人が、DM掲載の大きい作品をお求めくださいました。
この方はデパートに来て、たまたま画廊の前を通りかかり、人形が目に入ったそうです。
初めて見る人形の美しさが忘れられず、翌日もう一度画廊に来られて鑑賞したところ、その夜にどうしても欲しくて眠れなくなってしまったとのこと。
翌朝、現金をおろして来られ、お買い上げくださいました。
その人形は少し体に動きがあり、頭を颯爽とかかげ、着物の赤が元気を与えてくれる溌剌とした印象の人形でした。
「近々、養老院に入るのに、この人形を連れて行きます。」
とおっしゃって喜び溢れる笑顔で連れて帰られる後ろ姿に向けて、いつまでもお元気でいてくださいと祈りました。
残りの日々を少ないと考えて、切り詰める消極的な生き方。
あと1日しかなかったとしても、その1日のために精一杯に生きようとする生き方。
画廊の日々は、様々な人生とふれあう交差点です。
※ちなみに掲載した4作品はすべて売約済みです。