白馬岳は雲の中
昔ならめでたき還暦も、いまは厄介な代物である。
が、抗うことも空しく、通過させられてしまった。
過ぎてみれば何のことはない、次の道しるべまで荒野を行くのみ。
三人の子供たちから還暦祝いにと連れ出された小旅行。
行き先は長野県白馬村にある高原ホテル「cotton snow 」。
なぜそこを選んだのかと訊ねたら、三人の思い出が一致したのだと言う。
家庭を省みる間もなくガムシャラに働いていた頃、数少なく子供たちを連れて行けた家族旅行の一つだった。
自分の中では忘れていたホテルだったが、今回12年ぶりに訪れて、子供たちが選んだ訳がわかった。
その数年前にも泊まっていて、子供たちがまた行きたいとリクエストして訪ねたホテルだった。
今回3度目、オーナーご夫妻のおもてなしの温かさが、尋常でないことに改めて気づいた。
手入れの行き届いた美しいガーデン、室内の装飾、自家菜園の野菜を使った手作りの料理、殊に美味しさ満点の焼きたてパン、奥様の見事な手芸品や絵画の数々、それらを味わう時間を包んでくれる心地よいクラシック音楽、完璧な幸せ空間だった。
それが幼い子供たちの記憶に宿ってくれていたことに驚き、感謝した。
白馬に泊まった翌日は、戸隠神社に参拝。
今回は中社だったので、改めてパワースポットの奥社に参りたいと思う。
雲が垂れ込めていた鏡池は、神秘に包まれていた。
お客さまから頂いた東大寺筒井寛秀長老の「寿」も、還暦になって眺めると有り難き哉。
御神木