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Channel: 思いのしずく
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ミュシャ

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最初の写真は奈良県明日香村のキトラ古墳の天井に描かれた天文図。
3年前に飛鳥資料館でこれを見たときに、1300年前の人々が星空に抱いたロマンに触れたような感激があった。
世界で現存する最古の天文図だという。

この天文図を中心に展開する考古学ミステリー、池澤夏樹『キトラ・ボックス』が面白かった。
シルクロードの考古学者、藤波は新疆ウイグル自治区出身で国立民族学博物館研究員のカトゥンと銅鏡の謎を追っていく。(ミステリーなので詳細は省きます)
世界文学全集の編纂や地球環境をテーマにする池澤夏樹が、なぜ歴史ミステリーなのかと訝しく思いながら読み進めると、中国がウイグルやチベットへ侵攻し実効支配している問題が浮上してくる。

それぞれの民族には各々の歴史がある。その歴史を踏みにじられて祖国喪失の困難に直面している人々の悲しみが、今も現実に存在している。
たとえエンターテイメントであっても、それを無視しないところが池澤夏樹、目線が低い。

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ちょうど今、ミュシャの展覧会が開催されて、大きな話題になっている。
ミュシャといえば美しい女性像を描いた画家の認識だった。
花のパリでの成功を捨てて、祖国チェコで自身の民族の歴史を描くことに生涯を捧げたことを初めて知った。
チェコと言えばスメタナの「わが祖国」は、最も好きな音楽である。
失われた祖国を思う切なさ、人の気持ちの中に沸き起こる民族の誇りや勇気、失ってはならない希望の大切さが、モルダウ川のように滔々と流れる。

今回来日中のミュシャは、巨大キャンバス20点からなる「スラヴ叙事詩」。
古くから異民族の侵攻やハプスブルグ家に支配され、言葉や文化を奪われて来た自分たちの歴史を描き、スラヴの魂を取り戻そうとした作品。
ミュシャは人生の前半には女性の美しさを掴み、後半は平和の脆さと尊さを説いた。
最後にミュシャの言葉、
「いかなる国の未来も、その国が歩んできた過去や歴史を知ることにかかっている。」

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