と雄大なメロディーに乗せて 「さらばシベリア鉄道」 を歌った大瀧詠一氏が暮れに旅立った。
松本隆の詞は厳冬のシベリアを舞台に哀しく切ないものだった。
しかし大瀧氏の旋律は、ぐいぐいと体ごとシベリアの大雪原に向かわせてくれるダイナミズムに溢れていて気持ち良い。
一昨年の3月、岡本光平団長以下20数名と共に、ロシア・ハバロフスクの郊外を横切るアムール川に、1万年前の祖先が彫った 「岩画」 の拓本調査に出かけた。
3月とは言え、手付かずのシベリアの大原野は、まだ純白の雪景色に輝いていた。
膝まで積もった雪を掻き分け進みながら、耳の中にこのメロディーが湧き起こっていた。
♪この国の向こうに何があるの
歌詞は悲恋を綴ったものだが、自分にとっては、これから出合う1万年の時を超えた邂逅に対する期待そのものだった。
そんなことを思い出しながら、卒然とこの歌に殉じるように旅立ったミュージシャンの冥福を祈り、メロディーに耳を傾けた。
♪伝えておくれ 12月の旅人よ