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塩沼亮潤大阿闍梨

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ふしぎな不思議な廻り合わせ
高校時代に比叡山で千日回峰行を2度満行した酒井雄哉大阿闍梨(だいあじゃり)の行をテレビで見て、痛烈に心を打たれたのを覚えています。
その番組を見て、「自分もこの行をやりたい」と思って実行した小学生がいたのです。それが塩沼亮潤さん(1968年生)です。
それから45年ほど経ち、今回は塩沼さんの千日回峰行に痛烈な刺激を頂きました。

往復48キロ、標高差1300メートル超えの獣道を、16時間かけて1日で往復、9年の歳月をかけて4万8千キロを歩く奈良県吉野の大峯山千日回峰行の史上2人目の満行者 塩沼大阿闍梨さんのことです。

今年、還暦を迎えた私に、仙台の仕事で10年余お世話になってるSさんから、魔除けにと慈眼寺の念珠を頂きました。
その時に慈眼寺にいつかお連れしますと言われ、ご住職の大阿闍梨のことも知りました。
念珠と共に頂いたパンフには、修行によって得た気づきの言葉が溢れていました。

先週の仙台の仕事の前に、塩沼大阿闍梨さんの本「人生生涯小僧のこころ」を読みました。
書店で立ち読みすると冒頭から引き込まれてしまい、店内の喫茶店で一気に読み終えてしまいました。
修行僧が悟りへの苦行の道を歩き続ける姿が脳裏に焼き付き、それが私の中で発光体のように熱を帯びるようになりました。
2年前の秋、吉野の蔵王堂から西行庵を尋ねた時の金峯神社までの道が、わずかに回峰行の道と重なっていたことを知り、修行中の塩沼さんがそこを千往復したことを思って戦慄が走りました。

ぜひ仙台の仕事が終わったら、慈眼寺へ参ろうと決めたのです。
東京駅の新幹線22番ホームに並んでいると、パンフで見たお顔の、墨衣姿の塩沼大阿闍梨さんが前方から歩いて来られるではないですか。
驚きながらも、横を通り過ぎる刹那、しっかりとご尊顔を拝見しました。
あれだけの荒行を為し遂げた人という印象とは違い、若々しい姿に湖のように深く清んだ眼差に遇いました。
やがて仙台駅に着いて地下鉄と駐車場へのエレベーター乗り口で、再び大阿闍梨さんと一緒になるなど不思議な縁を感じる出来事で、私の中の発光体が一段と大きくなりました。
翌日の晩、山形の友人と食事をしている際に、仕事明けの15日に慈眼寺へ参ることを何気なく話したところ、その友人がいとも気安く「じゃあ塩沼さんの予定を聞いてみる」と言ってメールするのです。
この方はひょんなご縁で大阿闍梨さんと友人だったのです。
残念ながら大阿闍梨さんはご不在とメールの返信がありましたが、15日仙台の中心から1時間ほど離れた山里にある慈眼寺へ、Sさんの車に同乗して向かいました。
山形の友人は、塩沼さんと一緒に動体視力検査をした時のことを話してくれました。
検査官は、「これほど勝れた眼をした人は、見たことがない。たぶんイチロー並、何をしている人ですか?」と山形の友人に驚きを語ったそうです。
「人生生涯小僧のこころ」の中に次のような一文があります。
「命にかかわるといえば、なんといってもマムシです。夜中に歩いていて自分の右足を出したところにもしマムシがいて咬まれてしまったら、そこで行は終わりです。」
行が途切れてしまったら、自死しなければならない覚悟で始めた修行です。
夜中に提灯の明かりでマムシを見つけるには常に足元に注意を集中していなければなりませんが、足元ばかり見ていたら背中が丸まって行の歩きが出来ません。
しかし背筋を伸ばそうと遠くに視線をやると、足元が見えなくなります。命懸けで鍛えられた動体視力だったのです。
「マムシが近くにいると山椒のような独特の臭いがします。マムシだけでなく、獣が何分か前に通ったら、その獣の臭いもわかります。(略)
このように視覚や聴覚だけではなく嗅覚まで研ぎ澄ませて、時には石橋を叩くように用心し、また運を天に任せて後先考えずに進まなければならないときもあり、無事で帰ってこられることが日々奇蹟です。決して自分の力だけではありません。いや、ほとんどが神仏の冥加以外考えられません。」

夏の空が戻ったようなまぶしい太陽の下、慈眼寺の境内は静まり返り、気持ちよい空気に満たされていました。
塩沼大阿闍梨さんの一点の曇りもない悟りの心を物語るように、境内も掃き清められていました。

本堂に置かれていたパンフの言葉です。
「何ごとも飽きっぽく、同じことを繰り返すのは忌避されがち。(略)でも、繰り返すことではじめて、自分の欠点も成長も見えるのだろうし、自分のやれることとやれないこと、周囲が支えてくれていることにも気づくだろう。」

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