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Channel: 思いのしずく
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悲しみのクラウン

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その瞬間、世界中の人々に浅田真央さんのすべてから、日本文化を陰で支えて来た日本女性の美徳を感じて欲しいと思った。
アスリートとしてはもちろん、人としての素晴らしさ、美しさが泪を誘った。

強すぎるキム・ヨナ選手には、どこか鉄面皮な印象を勝手に抱き、昨日まで応援する気持ちを持てないで来た。
ところが、言葉の力というのは不思議だ。
今日の一言で、彼女のオーラが美しいものに変わった。
(裏を返せば、自分に人を見る目がないということになるのだが・・・)

今日キム・ヨナ選手がNHKのインタビューに答えて 「私は浅田真央が好きです」 と語った映像を見た。

一流だけが一流を知るというが、浅田選手にとって、最大のライバルから語られたこの言葉は、金メダルにも替えがたい友情のプレゼントだろう。
彼の国において、日本を評価することはマイナスになってもプラスになることはあり得ない状況の中で、国民の妹と言われるほど愛されている彼女によって語られたこの言葉には誠意と重みがある。

他の選手が好んで使うクラシックは全く使わない独自の選曲、バンクーバーでは007で金メダルを獲得。
将来、こういう人が大統領になったら面白い。

「浅田真央というライバルがいたから、私も成長出来たんです。」

昨日の敵は今日の友、まさにスポーツマンシップだが、キム・ヨナという傑出したアスリートには日韓の壁など超越した、世界を舞台に生きる人の真実を垣間見た。

自分の中にいくつか思い出の曲がある。

その中に、もう30年も昔に1度だけ聴いて、忘れられない曲がある。
1度だけというのは間違いかもしれない。
その朝、印刷会社で徹夜の出張校正を終えて帰宅する途中に寄った喫茶店で、BGMとして繰り返し流れていたからだ。

はじめて聴いた美しいメロディーに、命の汚れを洗い流された気がしたことを覚えている。

ミュージカル 「ア・リトル・ナイト・ミュージック」 の中の 「悲しみのクラウン」。

キム・ヨナ選手が滑るショートプログラムに流れていたその曲に耳を傾けながら、あの日の朝の情景が蘇っていた。

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